過日開催された「学生対校演劇祭 第二章~皆拓狂騒曲」
(2011年6月17日~19日 於サンピアザ劇場)
審査員の一人として参加し、各作品に関する講評を求められたので
以下のように感想を述べました。ここに転載します。
観劇順
◆北海道情報大学演劇部 6月18日(土)13:00~観劇
創部2年目とのことで、やってみたいことあれこれ、がんばったことを認めたい。客席からの登場もそれなりに効果があった。しかし、意外性を意図した台本の、登場人物や集団の位置づけがよく伝わってこない。謎めいている、のと、分からないのは違う。また人間性がほとんど見えてこないのも物足りない。今後に期待。
◆小樽商科大学演劇戦線 6月18日(土)13:30~観劇
個人的には最も楽しかった。話の内容ではなく、役者がそこにいる「居かた」の楽しさである。背中を見せてゲームをしている独り住まいの男。むやみに意気込んでやってくる警官の男。奇妙にキチンとドアの開け閉めを決めるおばちゃん。高揚したり地に着いたりニュアンスを変えて続く会話に、シルエットシーンがはさみこまれ枠組みをつくる。
パンフレットのコメントに「初の札幌出撃」とあるが、かつて(25年~30年ほど前)は、演劇戦線の役者固有の存在感が札幌で良く知られており、北大演研との対決合同公演なども楽しみだった。そんな時代をちらりと感じさせる何かが、今もここに受け継がれていることを不思議に思う。
◆北海学園大学演劇研究会 6月18日(土)14:00~観劇
はじまりからテンポよく、手なれた舞台づくりは劇団の伝統によるものか。よくある話、予定調和な展開ながらよく出来た台本。照明や高低差を活かした舞台づかいなどもうまい。役者にも魅力がある。役者賞の阿部大介のほか、親父、ねえさんなど。これだけ揃った布陣で、もう少し鮮度の高い、イメージ豊かな、短編ではない舞台が見たいと思った。
◆北海道大学 劇団しろちゃん 6月18日(土)14:30~観劇
等身大の設定で若者3人の関係を見せるオーソドックスな台本である。キーワードをきっかけに本筋から外れたコントが折り込まれる、という最近見かけることの多い構成だが、台本は順当に良く出来ている。狙いは分かるのだが、私が見た回は、本筋とバカ騒ぎのメリハリが決まらず退屈、見終わってあいまいな印象。他の回では、このあたりが格段にキレが良かったとのことで最優秀賞となったが、客席がさみしくても左右されずにテンションの維持するちから、逆に客席に呼応して見せ方・立ち方を変化させることのできるちから、それを学生演劇に求めることは無理だろうか。
◆北海道教育大学札幌校 演劇集団空の魚 6月18日(土)15:30~観劇
若い人の日常意識を、エロっぽい猥雑さで見せるという難しい挑戦。気持ちは分かる気がするが、これもどこまでやりきれるかが勝負。私が見た回は、代表の親御さんが会場にいらっしゃっているとのことで気恥ずかしさが勝ったか、弾けきれなかったと見た。
舞台後方の妄想担当グループと、前景の日常会話が、シンクロしたりせめぎ合ったりする関わりの面白さをもっと見たかったと思う。
◆酪農学園大学 劇団宴夢 6月18日(土)16:30~観劇
力の抜けた風、を意図したが、それには演技の基礎力が足りない。シンプルな状況設定だからこそ、場と心理を想起させるリアリティが必要。就活にイヤ気がさして南のリゾートにやってきたサバイバル能力ゼロの男たち、という滑稽さをもっと見せられるはず。
ただし、スコップの登場のさせ方は6団体中いちばん切れが良かったですね。